ゆうたろうが、まだお腹にいた7年前の10月のこと。
朝、早めに起きてシンタロウさんと一緒に、大きなお腹をかかえてお散歩に出かけるのが日課でした。
秋の気配を感じる少しひんやりとした信州の風がきもちよくて、空が高くて、いいお天気が続いていたある日。
散歩をしていると、なんだか懐かしい香りが。
匂いのほうへ目をやると、キンモクセイの木。オレンジ色の花がいっぱいについて、その香りをふりまいていたのでした。
私が通っていた中学校にも、キンモクセイの木が何本かあって、秋になると校庭を歩くたびに甘い香りだったことを思い出しました。
それで懐かしい感じがしたのでしょう。
明日、生まれるかもね。
なんとなく、そんな風に思って隣を歩くシンタロウさんにそう言ったら、
予定日はまだ2週間も先だけど、もしかしたらね、と笑ってて。
次の日の朝。
6時頃に目が覚めて、今日もいい天気なりそうとカーテンをあけたら、突然お腹が痛くなって、おしるしがありました。
そのまま、どんどんお腹が痛くなってきて、シンタロウさんが慌てて病院に電話して、車を出してくれての大騒ぎ。
それでも陣痛の間に、抜けるような青さの空を見上げ、やっぱり今日生まれるんだ、と嬉しく思ったのです。
おひさまが真上にのぼる前の午前11時5分。
ぴかぴかの青空の下、ゆうたろうが生まれてきました。
(これはゆうたろうが生まれた日の空の写真。私の宝物の写真です。)
新しい家の裏側にも、キンモクセイの木があります。
花がつき、家のまわりに風に乗ったキンモクセイの香りが漂いはじめると、懐かしい校庭の思い出とともに、ゆうたろうの生まれた日の青空と新しい家族を迎えた嬉しさを思い出すのです。